イシハラマコトのマンボな日常へようこそ☆


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『大日本人』  松本人志 / 監督・脚本

b0025405_12131.jpg遅ればせながら、松本人志監督の『大日本人』を観る。
お金を出してまで、同級生の映画を観ることもないだろうし、そもそも大体のコンセプトがわかってたので、そのうち観るだろうと放っておいた。
WOWWOWかなんかを家人が録り貯めたのを観る。

公開当初、様々な感想を聞いた。
意味分からんとか、単なるSFであるとか…。
深く考えては理解できない…とか。
どうしてみんな意味がわからなかったのだろう?

大変シンプルな映画で、さすがに四十路が撮った映画である。
何よりどっかの映画祭に招待作品として招聘されたのはよ~くわかる。

あれは、まさにチャップリンの「モダンタイムス」へのオマージュであり、ある意味、その延長線上の、しかも相当練られたパロディである。
チャップリンの「モダンタイムス」が、工業化という、その時代にとって、誰にも抗いようのない脅威に対しての嘲笑であったのと同じように、「大日本人」は現代の"ノイズ"という脅威への嘲笑(というか自嘲)であるのだ。

伝統というノイズ。血族というノイズ。民族というノイズ。ナショナリティのノイズ。家庭というノイズ。介護というノイズ。人間性というノイズ。良心というノイズ。メディアというノイズ。タイアップというノイズ。夫婦というノイズ。憲法というノイズ。アメリカ(イズム)というノイズ。愛欲というノイズ。季節のノイズ。ヒーローたる(四十路の)ノイズ。勝者のノイズ。弱者のノイズ。トラウマというノイズ…。

要するに、今ではカンタンに"ウザイ"で流してしまう事柄を、懇切丁寧に昆虫採集の如く緻密に採集している。あれだけのノイズを具体化させたところに、松本人志の才能の深さ(変さ)に改めて驚くのであるが、何れにしても、彼が相当マジメに映画と対峙したのはよくわかる。

そしてこの映画のテーマともいえる象徴的なシーンはココだと思うので書いておく。
ストーリーの重要なモチーフである"獣"との対決。
それまで、大日本人がピンでやっつけた”獣”は、みんな精霊(というか亡霊)となって天に召されて行くのだが、ラストのアメリカイズムの象徴的に扱われるヒーローファミリーは、敵を破壊(爆破)してしまうのである。
そこには、大日本人の持つ”もののけ感”は微塵もなく、そこでその場で”獣”の存在は一瞬にして消え、勝者が握手を交わすという質感。敗者への目線が無いどころか、存在すらしない。
日本人にとって、国際化における心象の違和感の核みたいなものを、相当考え抜いて表現していると思った。

ラストシーン。
ヒーローに抱っこされて空を飛び、M78星雲かどっかに大日本人は連れて行ってもらうのだが、全く言葉が喋れない…、離陸寸前に靴を落とすという大失態は、どうしても日本人としては赦せない国際環境に於ける自己(自国)の投影である。

ゆえにこの『大日本人』はめちゃめちゃシニカルで、そのコンセプトがはっきりしている。

作品としてどうのこうの…、というよりも、実に大まじめな映画であったと思う。
きっと彼は次回作で、また大いなる彼なりの映画へのオマージュを繰りひろげるのではないかと思うのだ。
そういう意味で評価されていいし、日本人にとっては相当カッコ悪いコトを暴かれて、何ともいえない後味の悪い作品を、どんどん撮ってほしいものである。

出来れば、映画監督だけ、吉本興業を離れて、独自のプロダクションを興したらいいのになぁ…と老婆心ながら思う(って同い年やった)
by nestvision | 2008-04-27 01:15 | 観ました!review