『自分の感受性くらい』 茨木のり子/著(花神社)
2006年 11月 25日
装丁も自分でされていた詩集で、その新装版を手に入れる。
とても心に突き刺さる20編の詩が整然と並ぶ。旅と共に持って行きたい詩集。
その中から表題作を、敬意と共に転載させていただく。
『自分の感受性くらい』 茨木のり子
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ