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『不意の出来事』 吉行淳之介/著 (魂がふるえるとき/収録)

宮本輝氏が厳選した16編の短編を収録した、
『魂がふるえるとき/心に残る物語-日本文学秀作選』に収録。
吉行さんのディティール描写、感情描写のエッセンスを抽出したような、素晴らしい短編。

「その臭いは私の官能を歪んだ形で引掻くようにそそり立っている」~これはまさにエロティシズムなどは超越して、人間の五感の究極の感情かも知れない。

冒頭の「いつもの匂いが、雪子の躯から立ち上がってこない」は、強烈な力を持って僕に迫る。
たとえば嫉妬という感情や、未練という感情の、最初の言葉にならないきっかけ。それって、こういう匂いの感覚なんだろうと思う。

そして、この短い短編で、吉行さんは「臭い」と「匂い」を完璧に書き分けている。すごい偉人だと思う。
by nestvision | 2006-10-08 12:12 | 読みました!review