イシハラマコトのマンボな日常へようこそ☆


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『アナーキー・イン・ザ・JP』 中森明夫/著(新潮社)

そんなに好きな人ではなかったけど、読んでみようと読んでみた。
「あぁ、大マジメに中森明夫は書いたんだ!」と思った。
彼がやってきた仕事、その根底にあるマグマみたいなものを、真正面から直視して何年か経ったんだろう。
そこに大杉栄という、今のニッポンにおいて、消そうとも消せない、ある種のまやかしであり、真実である史実。
それをアナーキー>>転嫁させてシド・ヴィシャスをも物語に練り込んだ、壮大な思想クロニクルだった。

なるほど!と思ったのは、大杉栄は明治〜大正を生きて、シンジくんは平成生まれであるという事。
昭和という時代をフォーカスしたのは斬新だった。
ロストジェネレーション。確かに軍国主義までのニッポンの帝国主義は理想に燃えていたように映る。
敗戦、昭和20年あたりから失われた10年を経て昭和が終わるまで。
自民党が闊歩し、税金はおろかニッポンを借金大国にしてしまったのもこの40年ほどの出来事だ。
それを昭和の申し子である中森明夫が書き、同じく昭和世代が深く頷いて読む。
まさにマルコム的な悪戯だなと感心した。

はっきり言って面白かったし、小説としてもかなり練り込まれている。
推敲というよりは、何度もリハーサルを重ねたリズム文体の集大成。ある意味で21世紀文体のひとつの回答。

「僕は精神が好きだ!」という大杉栄の言葉を背骨にして、綿密なる大杉論をちりばめて、なかなかロックファンにも納得のパンクロックを記号ではなく、具体化した読ませ方は凄いなと思った。

後半はもはや、原稿用紙上のライブであって、構成がどうのとかそういう問題ではなく、ぐるんぐるんと文体のサウンドが響き渡るのは斬新だった。

主人公のシンジの草食感も実感をともなって読者と同化できるし、青春小説のおいしい部分を巧く調合した所はもの凄い編集的なセンスがみえた。

中森明夫の質感は嫌いだけど、この小説は後世に残る名著である。
by nestvision | 2010-12-05 11:25 | 読みました!review