イシハラマコトのマンボな日常へようこそ☆


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『二人静』 盛田隆二/著

b0025405_11331687.jpgこの読後ブログもずっとさぼっていたのですが、本当に深く感動した作品だったので久々に。
内容の割愛は避けますが、とにかく現代に身を置く人間が、誰しも持っている心の不安感を、キッチュなエピソードで描くのではなく、本当に毎日の生活という膨大な時間をトレースして描いた意欲作だったと思う。
誰も悪人が存在しない。いや著者自身が悪人を登場させたくない!という強い祈りのような願いがにじみ出ている。
司法や行政の細かな、しかも現場でしかわからない事柄の多くは、丹念な取材でしか得られなかっただろうし、何よりこの1000枚の原稿には、膨大な推敲の跡が見てとれる。
選び抜かれた表現で淡々と、読者を置き去りにせずに時間を進めてくれる。
そして、様々な心理描写には、作者自身の精神の葛藤を経験した凄みも加わって、重量感を増していると思えた。
ラストの”救い”には思わず涙できたし、何よりも読み手が「明日もがんばっていこう」という希望を与えられる部分は作者の想像以上に膨らみを放っている。
5年という短い時間だが、小説を書き始めている身にとって、溜め息が出るような緻密な筆致をみせてもらったし、改めてその頂の高さを実感する作品だった。
まるで絹織物のように丹念に練られた小説だったと絶賛したい。
by nestvision | 2010-11-04 17:41 | 読みました!review